古屋佐久左衛門
ふるや さくざえもん

幕臣
 
天保4年、筑後御原郡古飯村の庄屋高松家の次男として生まれる。幼名勝次。3歳年下の弟
 
三男の権平は、後に箱館戦争迄を共にする幕府医師高松凌雲である。
 
次男勝次は家を出てから大坂、江戸で学問を得て御家人古屋家の婿養子に入り幕臣古屋佐
 
久左衛門となる。神奈川奉行所にも勤務したが、英学を学び通詞となり横浜で日本人の子
 
供が英国人の乗る馬に蹴られて負傷した事件の時に、個人で領事に直接交渉をし治療費を
 
支払わせたという話がある。古屋は外国兵書の翻訳にも取り組み、洋式陸軍の事ばかりで
 
はなく知識人としての名声が高まり、慶応年間には江戸三味線堀に英学塾を開いていた。
 
慶応4年、鳥羽伏見の戦で幕軍と薩長軍が開戦する。幕軍歩兵隊に於いては、佐久間信久
 
率いる鳥羽口の第11連隊と窪田鎮幸率いる伏見口の第12連隊がそれぞれ薩摩軍、長州軍と
 
衝突、戦闘中に両指揮官が死亡する。両連隊の多くの者は江戸へ敗走し、その兵約1500が
 
三番町の兵舎に収容される。彼らの大半は大坂付近で急遽徴募した火消し、やくざ、農民
 
などの寄せ集めであった。彼らは兵舎の中にいて外出も制限され食事も不十分、俸給もさ
 
れない事などに不満を募らせ、2月5日ついに暴発、当直の士官を殺害、銃砲弾薬を奪い、
 
北関東方面へ向けて脱走した。江戸にいた古屋は小石川鷹匠町の旗本松波権之丞からこの
 
話を聞き、取り押さえて統率すべきであると考え、松波を通して、当時幕府の全権を預か
 
っていた勝海舟の許可を得た後に、神奈川奉行所時代から親交のあった今井信郎、内田荘
 
司、永井蠖伸斎、天野新太郎らと共に江戸を立つ。2月中頃、野州(下野)佐久山で脱走
 
兵らに追いつき、数日にわたる説得の末、兵が帰順に応じた為、脱落者を除く約370名を
 
武州忍藩に預け、江戸の幕府陸軍局へ報告に帰った。この時古屋は歩兵頭を拝命し、脱走
 
部隊を統率して信州中野の鎮撫に当たるという新しい命令を受ける。勝海舟は、江戸城開
 
城と徳川家、幕臣の処遇を決定する交渉を進める背景として、海・陸の幕兵を表面上は江
 
戸から遠ざけながら、実は幕府の軍事力を等間隔に置き江戸包囲網を敷く形に布陣してい
 
たのであり、同じ頃、甲州方面の抑えとして新選組の近藤勇を甲陽鎮撫隊に派遣している。
 
古屋らは歩兵第六連隊の600名の兵数を新たに加え、砲三門と軍用金、食料を与えられて、
 
3月1日に江戸から出立。信州中野へ向かう途中忍藩に預けた脱走兵と合流し、3月9日
 
梁田(やなだ)宿で新政府軍の急襲を受け100名以上の死者を出し敗退、北上し3月22日会津
 
に入城した。古屋は城内で会津藩公松平容保、喜徳父子に拝謁。人員補充、武器弾薬の補
 
給を受け、24日城下興徳寺で梁田戦死者の供養をし、25日再び信州中野へ急いだ。この時
 
に隊名を「衝鋒隊」とする。総督古屋佐久左衛門、頭並隊長今井信郎、隊長内田庄司、参
 
謀楠山兼三郎。フランス調練を受けた旧幕歩兵と帰順部隊、脱藩者の計850名。士官71名、
 
大砲四門を有する大部隊であった。衝鋒隊は4月1日に新潟へ至り、中野へ向かう途中の
 
9日、千曲川を挟んで西軍と戦闘。盟約を結んでいたはずの飯山藩、高田藩の攻撃を受け
 
て敗れる。その後、越後長岡の攻防では機先を制して飯山城を攻撃し、長岡藩家老で藩軍
 
事総督の河井継之助、会津藩の勇将佐川官兵衛らと共に北越戦線に戦うものの、長岡は落
 
城し河井が会津に逃れる途中死亡。古屋は佐川らと共に8月14日に会津若松城に戻り、松
 
平容保に謁見、会津籠城戦に向けて18日赤谷口へ出陣する。22日深戸に着降、会津藩家老
 
梶原平馬の求めにより、城外の客兵部隊は裏磐梯、福島を経て仙台に至り、東軍の諸侯諸
 
部隊と会津救援に向かおうと考える。仙台には当時国内最強といわれる幕府海軍榎本武揚
 
艦隊が来着しており、敗色の濃くなる会津や奥羽諸藩の動向について幕臣を交えた軍議の
 
場となったが、奥羽各藩は恭順に傾いていたため、会津への新たな救援策は果たせず、会
 
津落城後の10月13日、古屋は松島港から榎本艦隊と共に海路蝦夷地へ向かった。この艦に
 
フランス留学から帰国した幕医で古屋の実弟である高松凌雲も乗っており、蝦夷に到着し
 
箱館戦争が始まると凌雲は日本初の赤十字精神に則った病院運営を行った事が有名である。
 
明治2年5月12日、箱館奪回を企てた総攻撃前に敵の砲弾で古屋は負傷し、五稜郭降伏寸
 
前の5月16日に死去した。享年37歳。
 
 
 

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